プリズンホテル〈4〉春

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English

義母の富江は心の底から喜んだ。
孝之介が文壇最高の権威「日本文芸大賞」の候補になったというのだ。
これでもう思い残すことはない…。
忽然と姿を消した富江。
その行方を気に病みながらも、孝之介たちは選考結果を待つべく「プリズンホテル」へ。
果たして結果はいかに?懲役五十二年の老博徒や演劇母娘など、珍客揃いの温泉宿で、またしても巻き起こる大騒動。
笑って泣ける感動の大団円。

Chinese (Traditional)

  ☆日本狂銷160萬冊之極道小說系列傑作
  ☆繼《鐵道員》、《椿山課長的那七天》後,日本直木賞國民天王淺田次郎又一感人鉅獻
  ☆在日本1993、1995及1999年曾兩度被改拍成電視劇,1996年也曾被改拍為電影。目前韓國也已有籌拍電影的計畫。
  ☆淺田作品中改編成電影、電視劇、舞台劇、漫畫次數最多的小說

  飯店入住須知
  一、本館已有萬全準備,若警察前來搜索或發生肢體衝突時,請保持冷靜並聽從人員指示。

  二、本飯店的客房全面使用鐵製房門及防彈玻璃,敬請安心住宿。

  三、若發現被逐出組織或不同家系等可疑人物,請立即與櫃檯聯繫。

  四、請道上客人不要在大廳或走廊上「交朋友」。

黑道大哥木戶仲藏經營的深山溫泉紫陽花飯店,由於招待的客人大多為黑道團體,因此當地居民稱之為「監獄飯店」。

老闆姪子木戶孝之介的兩項作品,同時入圍了文壇最高權威的「日本文藝大賞」。然而,此時繼母富江卻留下意味深長的話語,接著便不知去向。孝之介在遍尋不果之下,只好帶著妻女清子和美加,下榻監獄飯店靜待結果公佈。

春天的腳步染紅了環繞飯店的群山,各個懷抱隱情的客人,也隨著緋紅的櫻花雨翩然來訪。其中包括剛結束五十二年牢獄生涯,終於重返光明的老賭徒、一心望女成鳳,厲行鐵血教育的過氣女演員、以及立志成為小說家,同時也是孝之介忠實書迷的高中教師……

隨著四季之旅即將進入尾聲,今晚,在監獄飯店這個悲喜交織的舞台上,人們最終能否迎接圓滿的結局?

English

浅田次郎[アサダジロウ]
51年東京生。「地下鉄に乗って」で第16回吉川英治文学新人賞、97年「鉄道員」で第117回直木賞、00年「壬生義士伝」で第13回柴田錬三郎賞受賞

Chinese (Traditional)

淺田次郎

  1951年12月13日生於東京。高中畢業時,因三島由紀夫自殺事件的影響而加入自衛隊。退役後歷經各種工作,讓他擁有細膩多感的特質和豐富的生活經驗,形塑了其寫作風格。40歲時,以《被拿走還得了》一文初試啼聲。早期的作品以黑道小說為主,1993年首次出版的《監獄飯店》系列便是代表作。1995年,以《穿越時空.地下鐵》獲得吉川英治文學新人賞。1997年,更以《鐵道員》一舉奪得日本文學大獎直木賞,奠定了他在日本文壇的地位。

  其小說取材廣泛,文字風格多樣,不少作品在日後成為電影或電視劇的題材,可說是傳承日本大眾小說文化的小說家。如《椿山課長的那七天》中,以幽默風趣的筆調嘲諷官僚制度的不合理,同時刻劃出真摯的親情及愛情,令人動容。又如《鐵道員》,改拍成電影後獲得國際影壇的注目,更將他的文學推向世界級。

  在近20年的創作中,著作超過70本,自稱「小說的大眾食堂」。讀者也因為他作品中平淡卻溫潤的人情味,封其為「平成的催淚作家」。目前擔任多項文學獎審查委員,諸如直木賞、吉川英治文學新人賞、山本周五郎賞等。

得獎記錄
  ★1995年以《穿越時空.地下鐵》獲得第16屆吉川英治文學新人賞。
  ★1997年以《鐵道員》獲得第16屆日本冒險小說協會大賞.特別賞及第117屆直木賞。
  ★2000年以《壬生義士傳》獲得第13屆柴田鍊三郎賞。
  ★2006年以《切腹》獲得第1屆中央公論文藝賞、第10屆司馬遼太郎賞。
  ★2008年以《中原之虹》獲得第42屆吉川英治文學賞。

English

試し読みは

「うんと長生きして、
 文化勲章を貰うまでは、
 決して死にはしない」   ――偏屈な小説家は言った。


 水面に張り出した満開の下枝のもとに、ぼくはボートを止めた。
 櫂を舟べりに上げて寝転ぶ。じっとそうして散りかかる花にまみれていると、まるで幸福なゆりかごに揺られているような気分になる。
 いつに変わらぬ春であるのに、今年のそれが見知らぬ五つ目の季節のように感じられるのはなぜだろう。つまり、ぼくはいまそれぐらい、かつて知らぬ幸福と安息のうちにいるということだ。
 いつも現実から目をそむけて、ありもせぬ夢ばかり思い描く孤独な少年であったぼくは、学校の帰りによくこの千鳥ヶ淵でボートに乗った。そして日がな、甘い恋物語ばかりを考え続けていた。
 だが、あのころの空はこんなに青くはなかった。風も濁っており、笹立つ波はごつごつと舟ばらを叩いていた。おそらく、こうしてぼくを取り巻く風景の美しさと安らぎの分だけ、ぼくはあのころよりも幸福になったのだろう。
 美加がオーバーオールの肩をすくめて、小さな溜息をついた。
「ううん……お空をかくのって、むずかしいです。だめだなあ、これじゃ。だめだめ、かきなおし」
 ぼくは身を起こして、艫に座る美加に手をさし延べた。
「どれ、見せてみろ」
 美しい妻と、血はつながっていないけれどこんなに可愛い娘とを、ぼくは同時に手に入れた。このボート場を見下ろす一番町のマンションの最上階で、ぼくらは暮らし始めた。
 スケッチブックを手に取って、ぼくは感動した。クレパスで描かれたものは、広く大きな、ユトリロの空だ。
「どうしたら、お空を大きくかけるの?」
「たくさん描いた分だけ、大きく描けるのさ。おまえはきっとそのうち、ユトリロより大きな空を描くよ」
「ユトリロ、って?」
「家に帰って画集を見なさい。とても大きな青い空を描いた画家だよ」
 ふうん、と美加は母によく似た瞳を眩ゆげにめぐらし、桜の花を仰ぎ見た。
「はやくおとうさんのご本に、さしえをかいてあげたいんだけど……」
「あわてるな。時間は十分にある」
「でも、ママもおばあちゃんもあたしも、おとうさんのおせわになりっぱなしだから」
「なにをいつまでもそんな……ママがそう言ってるのか」
「あい。おとうさんのおうちは早死にの家系だからね、なるたけはやくご恩がえしをしないと、まにあわないって」
「ほう……」
 遥かに見上げると、番町の木立に抜きん出たマンションのベランダで、体操をする清子の姿が望まれた。帰ったら両手にダンベルをくくりつけて、手すりから逆さ吊りにするとしよう。
「あのなあ、ミカ」
「あい」
「うちはたしかに早死にの家系だが、おとうさんは別だよ。殺されたって死なない自信はある。うんと長生きして、文化勲章を貰うまでは、決して死にはしない」
「ぶんかくんしょう、って?」
「日本一尊い勲章さ。ほら、あそこに行って――」と、ぼくは散りかかる花の中に手を挙げて、皇居の深い森を指さした。「天皇陛下からいただくんだ」
 美加はスケッチブックを閉じて胸に抱くと、ふしぎそうに小首をかしげた。
「でも、おとうさんはこのあいだくんしょうをくれるっていうのに、そんなのいらないってことわりました」
「あんなもの、勲章じゃないよ」
 携帯電話が鳴った。花をふり払いながら、ぼくは作務衣のポケットから電話機を取り出した。
〈先生! 木戸孝之介先生ですね!〉
 鼓膜をブチ破るような金切り声は、丹青出版の荻原みどりだ。
 彼女はついにぼくから〈仁義の黄昏・完結篇〉をしぼり取ることに成功し、その論功行賞により、さきごろ副編集長に昇進したのだった。とたんに死神のような暗い表情は天使のように明るみ、美容院に通うならわしを身につけ、牛乳ビンの底のようなメガネのかわりにコンタクトレンズを入れた。のみならずストレス性潰瘍も完治し、夜ごと経費を濫用して荒飯を食らっているという噂である。
 あんな極道小説なぞどうでもいいが、女がきれいになるのはけっこうなことだ。
「――なんだ、おまえか。いったい何度言ったらわかる。小説家に電話をするときは、そういう神経に障る声を出すな」
〈はい、わかってます! それはわかってます! でも、先生、大変なんです、大事件なんです!〉
「ほう、そうか。ついに俺の文化勲章受章が内定したか」
〈冗談は顔だけにして下さい。実は、実は――ああっ、言えない。こんなこととても言えないっ!〉
 電話の声は近い。ぼくは受話器の中に今にも死にそうな荻原みどりの息づかいを聴きながら岸辺を見渡した。案の定、ボート小屋のテラスに、受話器を抱いたままババア座りにうずくまる女の姿が認められた。
 かたわらに長身の男が立っている。遠目にも冷酷な感じのするキザなダブルスーツは、出版界のジゴロ、岡林和夫だ。
「あれ……なんで岡林が一緒なんだ。おまえらは犬と猿の関係じゃなかったか。やっ、まさかおまえ、急に色っぽくなったと思ったら、岡林の毒牙にかかったわけじゃないだろうな」
〈ちがいます。そんなんじゃありません! ああっ、どうしよう、うまく言えないっ!〉
 貸しなさい、と冷ややかな東大出の声がして、岡林が電話機を取った。ぼくは美加をかたわらに呼び寄せ、櫂を片方ずつ操ってボートを漕ぎ始めた。
〈ごぶさたしております、先生。大日本雄弁社の岡林です〉
「いちいち言わなくてもわかる。第一おまえ、ごぶさたもなにも、おとつい銀座でゲロ吐いたばかりじゃないか」
〈……相変わらず露骨な表現をなさいますね……では私も、単刀直入に申し上げましょう。実は、このたび先生の作品が第八十回日本文芸大賞にノミネートされました〉

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